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DESIGNERS TALK 05

しゃべって学ぶ。学んでしゃべる。

入社3年目の桐原さんと、今年入社したての山田さん。学生から社会人になった新鮮な二人の眼は、サントリーのデザイン部をどのように捉えているのでしょうか。新人デザイナーならではの驚きやワクワクをまじえつつ、日々の仕事や商品開発の現場について包み隠さず語ります。

桐原実来

武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 卒業後、2021年サントリー入社。
〈BAR Pomum〉の開発に携わり、現在もデザインを担当。他〈ほろよい〉〈金麦〉の限定品や、〈BOSS WORLD JOURNEY〉〈とろけるカフェオレ 幸せ香るピーナッツ〉〈伝説の序章〉などのBOSS缶コーヒーバラエティ商品を主に担当。

山田泰樹

武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 インダストリアルデザイン専攻 卒業後、2023年サントリー入社。

コンビニの棚に「この前まで自分のMacの中にあったデザインが…」

桐原
桐原

山田君はどうしてサントリーに入社しようと思ったの?

山田
山田

「ブランドの世界観をつくる仕事がやりたい」と思ったからです。

桐原
桐原

そうなんだ。顧客接点の全体をデザインしたい、みたいなことかな。つまりブランディングってこと?

山田
山田

そんな感じです!僕はもともと大学でプロダクトデザインを学んでいたんですけど、製品ってまず機能があってから、デザインがあるというか…内側の機構と外側のデザインが密接に関係しているということがわかってきたんです。そしたらだんだん「製品だけじゃなく全体の世界観をデザインしたい」「使う人の気持ちまで考えたい」と思うようになって、根本的なコンセプトや製品全体の世界観をつくるところまで携われる仕事をしたいと考えるようになったんです。

桐原
桐原

なるほど。でもブランディングがやりたいのなら、どうして広告代理店とかじゃなくてメーカー、しかも「飲料」なの?

山田
山田

飲料って生活する中で、超身近な存在じゃないですか。世の中のいろんな人たちが喜んでくれることが自分の喜びにもなるって、めちゃくちゃいいな〜って思ったんです。

桐原
桐原

いいね。就活前から、いろいろ考えていたんだね。

山田
山田

こう見えてめっちゃ考えてました(笑)。桐原さんは、なぜサントリーに?

桐原
桐原

私も山田くんと同じように、「デザイン」の根本的な部分、つまり「誰かのために何かをつくって喜んでもらう仕事」に関わりたいと思ったんだ。だから私の場合、特にどの分野というこだわりがあったわけではなく…サントリーに入りたいと思った理由は、雰囲気や環境が魅力的だったからかな。

山田
山田

あ、僕もそうです!就活の時に聞いたサントリーデザイン部のオンライン説明会が、まるでラジオ番組の掛け合いみたいで。ものすごく自由で楽しい雰囲気だったんです。あと、企業理念にある「やってみなはれ」という言葉がぐさっと刺さりました。「ここなら自分らしく挑戦することを後押ししてくれる」って思ったんですよね。

桐原
桐原

実際入ってみて、どう?

山田
山田

とにかく毎日が面白いです。そして思ってたよりめっちゃ忙しい…。いろんなプロジェクトが同時進行するじゃないですか。

桐原
桐原

たしかに。皆、プロジェクトをいくつも抱えて仕事してるよね。

山田
山田

「この日までにこれ考えて」「いついつまでにデザイン案、よろしく」とか。いろんなことが一気に押し寄せてくる感じです…。大学ではひとつずつ課題に集中すればよかったけど、ここでは同時にワーッと走らせなきゃならなくて。

桐原
桐原

内容も、商品デザインに限らず色々あるもんね。

山田
山田

新人の僕でさえ、今担当しているものは商品デザインからサービスデザイン開発まで色々です。とにかく幅が広すぎて、脳みそも常にスイッチを切り替えながらフル稼働しなくちゃならない…。求められる領域の広さがよお〜くわかりました!(笑)

桐原
桐原

商品単体のデザインを考えるだけじゃなくて、届け方や伝え方にもアイデアが必要だから、 デザインってほんとに幅が広いよね。

山田
山田

いや〜大変。でも、大変だからこそやりがいもある。僕は入社3カ月なのでまだ経験してないけど、自分が関わった商品が実際に世の中に出たらきっとすごくワクワクするんだろうな…。

桐原
桐原

そりゃもう、喜びは大きいよ!毎回ものすごくワクワクするし、本当に嬉しい。

山田
山田

桐原さんの最初の仕事って何だったんですか?

桐原
桐原

〈CRAFT BOSSの豊潤フルーツティー〉。 私が入社した2021年当時はコロナの真っ最中で、大学の卒業式直後に気付いたらもう社会人だったの!学生気分が抜けない状態でそのまま最初の仕事に突入したって感じだったから、初めて担当した商品なのに発売直後はなかなか実感が湧かなかった。コンビニの棚で見かけても「あれ?この前まで私がMacでデータいじってたやつだ…」とか思うくらいで(笑)。だけど、友だちから「見たよ」「飲んだよ」「すごくいいね!」って連絡をもらって。そこで初めて「誰かの手に渡るって面白い」「すごいな」って、ジワジワ嬉しくなったな。

入社3日目、最初の仕事は「200億円規模」

桐原
桐原

山田君も今やってる商品が店頭に並んだ時のこと、楽しみにしててね!

山田
山田

いやぁ〜楽しみです。でも、なんか緊張!(笑)

桐原
桐原

入社して間もない新人も、すぐに世に出る商品に関わる。発売を前提とした仕事を担当させてもらえるのは、うちらしい「どんどん実践で学ぶ」スタイルだね。

山田
山田

僕、入社3日目にとあるプロジェクトの担当として呼ばれたんですけど、まず初めに「200億円規模の影響を及ぼすプロジェクトです」って言われて「ええェ!?」って。「3日目だぞ、俺!」「200億?どういうこと?!」って。でかすぎてドン引きしちゃいました。

桐原
桐原

そうなるよね(笑)。私も「この商品は全国のコンビニやスーパーに並びます」と言われた時は「ぜ、全国…!」って感じだったもん。

山田
山田

てっきり新米デザイナーの最初の仕事は「はいこれ、カッターで切ってきて」「これコピーして」って感じだと思ってましたから。

桐原
桐原

…偏見すごい(笑)。要は先輩のアシスタントをしながら徐々に学んでから本格的に仕事をしていくと、思っていたのかな?実際は、いきなり学びと仕事が同時進行していく感じ。

山田
山田

ですね。あと、プロジェクトチームがすごくコンパクトだったことにも驚きました。

桐原
桐原

あ〜たしかに。商品開発ならプロジェクトメンバーが他部署も含め5、6人ってこともある。

山田
山田

サントリーって僕のイメージでは「大企業!」って感じだったので、一本の飲料の開発をするにも20人くらいが会議室で縦長の机囲んで会議してるんだろうと思っていました。それがすごい少人数でどんどん進めている。デザイナーも1人か2人だし。

桐原
桐原

デザインディレクターとデザイナーの2名体制が基本かな?先輩後輩で組む感じだよね。

山田
山田

先輩と一緒に仕事しながら、まさに「現場で学んで」ます。

ベテランも若手もとにかくしゃべる?!

山田
山田

一緒に仕事している先輩も、そうでない先輩達も、日頃からよく話しかけてくれるのでめちゃくちゃありがたいです。「昨日こんなことがあってさ」とか、「昼飯食べに行かない?」とか、先輩というより気のおけない友だちみたいな。だからいつの間にか「オレ、馴染めてきたなァ」って感じで。

桐原
桐原

私もそうだった。入社直後は「自分の個性をしっかりアピールしなきゃ」とかいろいろ考えちゃって緊張していたんだけど、周りの先輩達とフラットにしゃべっているうちに「そっか、私は私のままでいいんだな」と思えるようになった。そうやって自然体でいられるような雰囲気がここにはあるよね。

山田
山田

それに、いつもワイワイしているというか…シーンとしている事がないですよね。会社という場所は全員が一斉にパソコンに向かって、一心に作業しているものだと思っていたので…。

桐原
桐原

また偏見が…(笑)。そのイメージとは、もろ真逆だね。プロジェクトで動く時も新人にはコーチャーがついてくれるし、常に誰かとコミュニケーションとってる感じ。 ※コーチャーとは:デザイン業務だけでなくスケジュール管理や困りごとなどの相談に乗るため、1年間新人デザイナーに寄り添う中堅デザイナーのこと。

山田
山田

ですね〜。正直まだ必死でついていくのが精いっぱいという段階ですけど、まだまだな僕に対しても頭ごなしに意見を否定するような人はいなくて「こうしたらもっと良くなるんじゃない?」っていっぱいアドバイスしてくれます。

桐原
桐原

そうだね。一緒になって悩んだり考えてくれるし、その会話の中にたくさんヒントがある。先輩たちも個性的な人ばかりだからそれぞれ、いろいろなやり方や意見があるけど…

山田
山田

桐原さんのコーチャーって、どんなタイプの方だったんですか?

桐原
桐原

うーん、すごくアツい人。言葉を選ばずに言えば「昭和のオジサン」って感じの人だったかな。

山田
山田

「昭和のオジサン」?

桐原
桐原

いい意味でね(笑)。すっごい気さくに、でもめっちゃ真剣にディスカッションしてくれたんだよね、なんにも知らない平成のコムスメ相手に。デザインを巡ってバチバチ議論するみたいなことをすごくたくさんやった。おかげで違う年代や考え方と向き合って、価値観の多様さをよく理解できたし面白い発見がたくさんあったんだ。

山田
山田

良いコンビ。メチャメチャ刺激受けそうっすね!

桐原
桐原

1年目が終わる時、そのコーチャーに「オレ桐原さんと仕事して気づいたことがたくさんあったよ」って言ってもらえて嬉しかったなぁ…。きっとお互いに刺激を受けあっていたんだと思う。案件ごとにいろいろな先輩と組むから、そういう面白さもこれからたくさん感じるかもね!

遊びの本気度もハンパない

山田
山田

先輩後輩、お互いに刺激し合えるってとてもいい関係っすね〜。僕ら若手からすると、プロジェクトによっていろんな先輩と組んで仕事できるのはとても勉強になるし、何より楽しいです!

桐原
桐原

楽しいってすごく大事。デザインの役割ってそもそも「人を楽しませる」ってことだったりするし、その根っこにあるサービス精神は、ここにいるメンバー皆が持ってる気がする。例えば歓送迎会とか、忘年会とか、年に4,5回くらいある部内イベントの幹事は、若手からベテランまで全員で持ち回りで。先輩たちも忙しいのに、スケジューリングから企画・出し物・制作まで、凝りまくってやってるの、毎回面白いしすごいなって思う(笑)。結局皆、人が好きで、人を楽しませるのが好きなんだよね。

山田
山田

僕らがデザイン部に来た時の歓迎会も、めちゃ楽しかったです!…「会社の飲み会」と言ったら上司にお酌して回ることだとばかり思ってたんですけど…。イメージとは全然違いました!

桐原
桐原

また偏見 (笑)。

山田
山田

たぶん僕も今度の忘年会で幹事をやることになると思うんですけど…面白くできるかなぁ…どうしよう。今から考えないと。

桐原
桐原

楽しみだなぁ〜(笑)。何よりも、自分自身が楽しんでやるのが大事だと思うよ!

いつの間にか自分の目線も変化して…

山田
山田

サントリーのデザイナーになってから、道端の自販機とか気になっちゃったりとか、いろいろ見え方が変わったような気がします。

桐原
桐原

わかる!コンビニではどんな人がどんな飲料を買ってるのか、気になったり。

山田
山田

自販機もどこのメーカー?とか、どんな飲料が並んでいるかとか、つい見ちゃうんですよね。そもそも学生時代は自販機がメーカーごとにあるってことすら知らなかったのに…。

桐原
桐原

自分のいる場所が変わると意識や視点も変わるから、同じものでも違って見えるよね。美大に入る前と後とでは同じアニメでも違って見えたりしたなー。「このアングル、どうやってつくったのかな?!」「アニメーションのつくりこみ、エグいなあ」とか。

山田
山田

たしかに。世の中の色々な商品の開発背景とか、その裏側まで考えるようになったかもしれないです。

桐原
桐原

つくる側の目線になったってことだね。でも生活者目線も大事だよ。私、そこは絶対忘れないようにって思いながらいつも仕事してるんだ。

山田
山田

大事ですね、そこは。社会人になって…僕も着実に変化してるのかな…。

桐原
桐原

気づかないうちに、どんどん成長してると思うよ!

山田
山田

いや~。でも、まだまだっす。一言もしゃべれなかった会議もあったし、専門用語も市場の話も全然わからずに、聞くだけで終わっちゃうことも多いし。しかも皆さん、しゃべるスピードがとんでもなく早くて。ビュンビュン言葉が飛び交うし「え?それ、なに?」という間に話題がどんどん先に行っちゃって…。

俺、全然「しゃべれない」じゃん…

山田
山田

そんな僕でも、大学時代はめちゃくちゃ喋れる方だって思ってたんです。それが会社に入って1週間で絶望…。自分の無力さに気づかされました。「オレ、全然しゃべれないじゃん…」って。

桐原
桐原

私も入社したばかりの頃、会議で「なんか言わなきゃ」と思うあまりトンチンカンなことしゃべっちゃって無駄に時間を使っちゃったこと、あったよ。限られた時間の中で、伝えたいことをわかりやすく伝える力って訓練が必要な気がする。特に、プレゼンとか。

山田
山田

先輩たちがプレゼンしてるの見た時は、本当に衝撃でした!大学の頃って、プレゼンは作品のおまけみたいなものだって思っていたところがあって、ある意味、適当にやってたのかな。カンペを棒読みしてたし。

桐原
桐原

たしかに、この前山田君カンペ持ってたのはちょっと新鮮だった(笑)。

山田
山田

先輩たちは誰一人カンペなんて持たずにスラスラ話してて愕然としました。それまで「プレゼン=カンペを読む」だと思ってましたから。「甘すぎた!」って。打ちのめされた。どうやって伝えるかにこだわることが実は大事だってこと、思い知らされています。とにかく皆さん、しゃべるのがうまくて。

桐原
桐原

要はイメージの言語化能力なんだと思う。すっごく大事なことだよね。

山田
山田

自分の感じたことや表現したいことがロジカルに整理できている、というか。僕は今まで、感覚だけでふわっと「こんな感じかな〜」って言葉を口に出していましたけど、先輩たちはしっかりと自分の意見を自分で理解していると思いました。

デザインのはじめに、言葉あり。

桐原
桐原

議論の場に限らず、手を動かしてデザイン表現に落とし込む時もそう。ちゃんと意味があるし、背景があるんだよね…それを言語化するってものすごく大事だったりする。それに伝えるためだけじゃなくて、表現の根拠を自分自身で確かめることにもつながる。

山田
山田

いやーめちゃくちゃ難しい、でも超大事。

桐原
桐原

実際私も、自分のつくったデザインを言葉にするのに相当苦戦したなぁ。「これはどういう意図でデザインしたの?」と聞かれても、ちゃんと答えられなくて…。1年目で手掛けた〈BAR Pomum〉の商品開発の時とか。そもそもお酒の市場のことも、全然わかってなかったし。

山田
山田

ピンチじゃないですか!それでどうしたんすか?

桐原
桐原

先輩が絞りだしてくれたの。「なんで?」「なんで?」ってしつこく聞いてもらって、それに対して一生懸命答えていくなかで、物事を「目的」で考える訓練をされていったというか。表現は「手段」でしかなくて、そこに至る「目的」が大事。でも当時の私は「なんでこんなに伝わらないんだろう」って、自分の言葉の稚拙さに泣いちゃったこともあった。1回だけね!(笑)

山田
山田

へえぇー。

桐原
桐原

でもそのおかげでわかったんだ。相手に伝える以前に、そもそも自分がなにを思っているのかを把握することが先決だって。「自分がなにを思ってこうしたのか」「そもそもなんだっけ?」って物事を俯瞰して考えていくうちに、自分の発想の根元がわかるようになった。

山田
山田

感覚の奥にあるものが大事で…それを言葉にするってことですか?

桐原
桐原

そうそう、そんな感じ。思考の言語化はほんとに回数を重ねることが必要かも。でもそれが見つかれば表現アイデアの大きな手がかりにもなるんだよね。コンセプトの芯がどこにあるかも見えてくるから。

山田
山田

なるほど〜言葉を探す意味はそこにもあるってことか〜。

桐原
桐原

サントリーの商品づくりは言葉から始まるところ、あると思う。

山田
山田

言葉が見つかると同時に絵も見えてくる?

桐原
桐原

そう!だから商品開発の議論でもそこにかける時間がめっちゃ長いんだよね。味をつくるため、表現をつくるために、具体的なキーワードから、本質的な価値をあらわす抽象度の高い言葉に昇華させていく作業。言葉を探すことができれば、会議での積極的な発言にも徐々につながっていくんじゃないかなあ。

山田
山田

なるほど、難しいな…。でもまずは、どんどん言葉にして「しゃべる」こと!そこからですね。

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